第2章 中編
ルシスほど大きな都市ではないが、それなりに発展している街に連れていかれ、知らない人に身柄を渡されたユーリ。
「まぁまぁアーデン様。ずっと来てくれるのをお待ちしておりました」
「いや、ちょ…」
「久しぶりだね。あの時断った報酬のことなんだけど」
彼女の戸惑いの言葉を遮り二人で何やら話し込んでいた。
どうやらアーデンはこの街を治めている婦人を病から救ったらしい。
彼女はこの街の一番の権力者なので、お礼としてアーデンが望むもので出来ることは何でもすると提案した。
しかしアーデンはその提案断っていた。
欲の少ない彼は、咄嗟に思いつくものもないし、今まで病を治して何かを貰ったり要求したことはなかったのだ。
そんな彼に婦人は、何かあれば何時でもお待ちしていますと言ってくれた。
本当はもうここに来る予定はなかったけど、折角なので利用させてもらうことにした。
「その子の身なりを綺麗にしてくれないかな?」
「はい、お任せください。さぁどうぞこちらへ」
「いや、だから…え?」
彼女の意思表示を確認しないままズルズルと従者に連れていかれる。
そんな彼女の様子に、アーデンは僅かに笑って見送っていた。
そして数時間後。
「アーデン様、お待たせしました」
アーデンは通された客間で待っていると、1人の従者に連れられて彼女が入ってきた。
その表情はどこかげっそりしていたが、予想通りいい意味で化けていた。
淡い金髪はもとの美しさを取り戻し、薄汚れた肌も透き通るような白さになり、ボロボロの服は小奇麗なワンピースに変えられていた。
「本当はもう少し色々と着飾って差し上げたかったのですが」
従者の説明によると、彼女は高価な装飾品は一切受け取ろうとせず、衣服もボロボロの服をまた着ようとしていたので、そこだけは何とか説得して、一番素朴な服に取り換えさせたとか。
「よかったらアーデン様も一緒に…」
「あぁ、オレはいいよ。じゃぁ、行こうか」
アーデンは従者に礼を伝えるように言うと、再び彼女の手を取って歩き出した。