第2章 中編
その日アーデンは、漸く見つかった神凪と対談していた。
それは次期国王の選定の日が迫っていることを意味している。
神凪であるエイラは民を救っているアーデンに惹かれ、何かと行動を共にすることが多かった。
アーデンはそんな彼女を無下にできず暫くは好きにさせていたが、神凪である彼女を荒野へ連れて行くのはどうかという意見が飛び交い、次第にやんわりと断るようになった。
彼女からの好意は分かりやすいほど伝わってきた。
誰から見ても絶世の美女と思われる彼女から好意を向けられて、嬉しくないものはいないだろう。
だけどアーデンの脳裏には、神凪と聞いて昔出会った一人の少女が浮かんだ。
年齢的にエイラとは別人なのだろうが、この世に神凪と呼ばれる人が2人もいるのだろうか。
アーデンはそう疑問に思いつつ、エイラに見送られながら、再び王都を旅立った。
「さて、今日は何処に行くか」
慣れ親しんだ道を進みながら、アーデンは雲行きが怪しくなっているのを感じ経路を変更する。
確かこの森の先に、雨を凌げる場所があったはず。
少し前に見つけた遺跡は、アーデンのお気に入りの場所だった。
遺跡の先に見える、巨大な滝。
その絶景を見ると、穢れていく己が浄化されるような、そんな気分になれたのだ。
アーデンの身体に異変が起き始めたのは、ほんの数か月前。
今まで蓄積されたものが溢れるように飛び散った黒い粒子。
何となく分かってはいたが、絶望した。
きっとそう遠くない未来に、オレは殺されるだろう。
~~~♪
アーデンが遺跡に足を踏み入れると、不思議な歌が聞こえた。
この場所を知っている者が他にもいたのだろうか。
そう思いながら足を進める。
「ティ アデ ベェネ…」
遺跡を抜けると、そこには広大な滝の姿と、一人の女がいた。
彼女は静かに歌声を響かせる。
身なりも姿もボロボロの彼女だったが、その歌っている姿は神聖なもののように見えた。