第2章 中編
「おじさん、大丈夫?」
朝日の光と呼ばれる声に目を覚ましたアーデン。
てっきり死んだと思っていたのに、まだ生きていた。
朦朧とする意識の中で視線を動かせば、傍に少女が座っている。
アーデンの肩に手を触れて、こちらを覗き込んでいる少女。
キラキラと輝く淡い金髪に金色の瞳を持つ彼女は、少女でありならがどこか神々しい雰囲気を感じた。
アーデンは暫く茫然としていたが、ゆっくりとその身体を起こす。
「……?」
するとすぐに違和感に気づいた。
あれほど悪かった体調が嘘のように良くなっている。
服を捲ってみても、黒く犯されていた皮膚は綺麗になくなっていた。
「私が治してあげたんだよ!」
アーデンの行動で感づいたのかどこか得意げに言っている少女を、信じられない表情でアーデンは見る。
「ほんとは力を使ったらダメだって言われているけど、今日は特別みたい」
「…君はいったい…」
アーデンの目の前にいる少女は、どこからどう見ても普通の少女だった。
寄生虫に侵された人を救うことのできる人間なんて、聞いたことがない。
……いや、まさか…
「神凪…か?」
アーデンの言葉に一瞬首を傾げた少女。どうやらよく意味が分かっていないようだった。
「神様からね、おじさんを治すように言われたの」
少女が発した神という言葉に引っ掛かりを覚えたが、聞いたところで彼女もわからないだろう。
「…言っとくけど、オレはまだ若いんだが」
「よかったね、治してもらえて!神様に感謝だね」
アーデンの言葉を完全にスルーすると少女は立ち上がり、そのまま何事もなかったようにその場を離れようとした。
「ちょっと待て」
立ち去ろうとする彼女に、アーデンは思わずその幼い手を掴んで止めた。
「どうしたの?まだ痛い?」
「…いや」
本当は聞きたいこと尋ねたいことが山ほどあった。
だけど何もかも突然すぎて言葉を失ったアーデン。
そんな彼を不思議そうに見ていた少女だが、痛くないと分かるとその手を外した。
「ばいばい!」
そしてその言葉とともに去っていく彼女を、再び引き止めることは出来なかった。
結局彼女の名前も正体も何も分からないままだ。
そしてその日以降、オレは不思議な力を持つようになったのだ。