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闇夜の雫【FF15】

第2章 中編



そして数年が経った。

結局あの村に神凪はいなかった。

弟自ら出向いて確認したのだから、間違いないのだろう。

勝手に保護対象として、勝手に切り捨てる。

なんとも反吐の出る行動だったが、正直オレには関係のないことだった。

自由気ままに放浪を続ける。それが出来れば、それ以上望むものはなかった。

愛馬に乗り、今日も気ままに旅を続ける。

家臣も付き人も誰もいない。

この力のおかげで、寝床も食事も困らなかった。

気まぐれに立ち寄った場所で慈善活動をし、そこで一晩過ごすと、また旅を続ける。

すでにアーデンの名は世界中に広がり、完全な有名人扱いだ。

そしてそれを、同じ国王候補である弟は面白く思っていないだろう。

ここ最近、ならず者に命を狙われる機会が増えつつあった。
犯人は分かっていたし、アーデンより強い者は早々いないので好きにさせているが、正直煩わしかった。






次期国王に興味もなければ、正直人を助けようなどという善意もあまりなかった。

だけど、人を救う力を得た以上、病に侵された人を黙って見過ごすほど、非道でもなかった。


それもこれも、この力を得る前のまだ若い時、1人の少女に助けられたことがきっかけなのだろう。

アーデンもまた、寄生虫に侵されていた時期があった。

王族が病にかかるなど、絶対にあってはならない。

だから彼は分厚いコートで身を隠し、各地を巡察するという名目で王都を離れていた。

そうしたところで何も解決しないが、黙って殺される気などなかった。

アーデンは日に日に弱っていく身体に舌打ちをし、野宿の準備も碌にせずにその場に倒れるように座り込む。

日もすっかり暮れているので、火を焚かないと寒いし、獣が寄ってくる。

そう分かっていても、もう動くことが出来なかった。

王族出身が、こんな荒野で野垂れ死にとは。



「…まぁ、他者から殺されるよりはいいか」

アーデンはそう苦笑すると、その瞳を閉じた。


















~~~♪





静かな森に響き渡る幼い歌声。


朦朧とする意識の中で、その歌だけははっきりと聞こえた。

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