第2章 中編
寄生虫を体内に取り込める体質となったオレは、瞬く間に英雄扱いになった。
どこに行っても感謝と賛辞の言葉が飛び交う。
まぁ、身を犠牲にして命を救っているから当然と言えば当然なのだろうか。
アーデンは己の手を見た。どんなに寄生虫を体内に取り込んでも、身体に異常は見られない。その事実が不気味で仕方なかった。
周りは、次期国王はアーデンだと勝手に盛り上がっている。
国王とかそう言った類のものにあまり興味はないが、この力のお陰で各地を放浪できるのは悪くない。
何よりも自由を好む彼は、ほとんど国を空けている状態が多かった。
そしてそんな彼に、1つの指示が言い渡される。
神凪が漸く見つかったと。だから病に侵されないように、保護を言い渡された。
神凪、神と対話でき治癒能力を持つ一族。
アーデンはふと首を傾る。
治癒能力を持つなら、わざわざオレが出向く必要はないはず。
そう疑問に思ったものの、好奇心が勝ち黙って指示に従った。
村を訪れると、何とも寂れた空気に本当に神凪がいるのか疑わしかった。
しかも村人の多くは病に侵されている。
アーデンは警戒している村人に苦笑すると、事情を説明し病を治した。
事情と言っても、神凪の件は伏せていたのだが。
まるで隠れるように住んでいる彼ら。
もしかしたら、何かがあるかもしれない。
病に侵されている人々を治療し終わると、暫く様子を見ることにした。
一度帰国し、家臣に村での現状を伝えると、神凪は必ず現れると何とも信用できない答えが返ってきた。
どうやらあの村に住む一族は、神と繋がりがあるらしい。
保護とはその力を狙う輩から守るという意味も含まれてると。
一体どこの情報網なのだろうか。
どうせ聞いたところで、くだらない解答しか返ってこないから聞かないが。
過去に何度も似たようなことがあったのだ。
一体なぜそこまでして、神凪を探しているのか。
恐らくそれは次期国王の審判を下す為だのだろう。
アーデンは興味がないとばかりにため息を吐くと、再び国を出る。
出立の前に家臣から苦言を言われたが、知ったことではない。
国王などなりたい奴がなればいい。
オレはただ、自由に生きたいだけだ。