第2章 中編
2000年前、この星は寄生虫に侵されていた。
私の一族はある特殊能力から希少価値が高く、その病からの保護の対象とされていた。
しかしそうなったのも最近のことだ。
母も父も病に侵され、人間に殺された。
そして一族の存亡の危機に迫った時、ある男がこの村を訪れる。
次々と寄生虫に侵された人々を治していく様子を、私は物陰から見ていた。
奇跡的にまだ病に侵されていない私は、その男と接触することなく時が過ぎて行く。
世界で流行っている病なのに、何故かその男はこの村でその症状が出たらすぐに現れた。
颯爽と現れては直ぐに立ち去っていく。
そんな存在が、幼い私にはヒーローの様に思えた。
あれは私が16の時だろうか。
一族が病に侵される心配はなくなったが、敵は寄生虫だけではない。
私によく歌を教えてくれた祖母は、何者かに殺されてしまった。
祖母だけではない、ここ数年で多くの村人が殺されていたのだ。
私の一族が持つ能力が何なのか、それは知らなかった。
だけど、他者から殺されるほど、望まれていないものだという事だけは分かった。
そして私は今、私を殺そうとしている人間達から逃げている。
ここ数年、何かを探しているように訪れるくる兵士達。
理不尽に捕らえ、探している人ではないと分かると、当たり前のように殺される。
最初はルシスの国が守ってくれたが、気が付けば見捨てられていた。
ある日、この村に次期国王候補であるソムヌスが訪れた時、まるで汚らわしい何かを見る目付きで見られた。
それ以降、この悲劇が始まったのだ。
私の身体は今、病に侵されている。
脳裏に浮かんだのは数年前から来なくなった、あの男。
叶わないと分かっていても助けを求めて手を伸ばしたかった。