第2章 中編
クリスタルの間は国王しか開くことが出来ない。
それが何故、このタイミングで開いたのか。
ユーリは少年を突き飛ばすと、扉を潜り抜ける。
「……巻き込んですみません」
地面に倒れた少年に兵士が駆け寄る。
慌ててユーリを振り返った少年には、先ほどの言葉が聞こえたのだろうか。
何とも形容しがたい表情でこちらを見ている、この国の王子。
ユーリはその少年から視線を外すと、中へと進んでいった。
兵士が駆け寄るも、バリヤのようなもので弾き返される。
そうこうしているうちに、クリスタルの間の扉は再び硬く閉ざされた。
「…さて、一体なぜこうなったのでしょうか」
ユーリは目の前で眩い程の光を放っているクリスタルを見ながらそっとため息を吐いた。
気が付けば身体が動いていた。
ここまで来ると、最早誰かに操られているかのようだった。
辛うじてニフルハイムの人間だとバレてないだけまだマシなのだろうか。
いや、どう足掻いても国際問題に発展する事態だ。
ユーリが頭を抱えている間も聞こえてくる、呼ぶ声。
これは幻聴なのかなんなのか。ついに私も頭がおかしくなったのだろうか。
ユーリは呼ばれるままクリスタルの前まで来ると、その光に手を伸ばす。
「……っ!?」
光に触れた途端、強烈な衝撃が彼女を襲う。
「…あっ…なんで…」
あれほど眩しい光を出していたクリスタルが消えた。
そしてそれと同時にユーリはその場に倒れ込み、意識を失ったのだ。