第2章 中編
少年の口から語られた、おとぎ話のような物語。
病に侵された人々を救った、1人の王子。
自らその病を取り込み穢れ、クリスタルに選ばれなかった哀れな王子。
そして彼の最後は……
「…っ」
ユーリは気がつけば図書館から飛び出した。
背後で何か少年が叫んでいたが、彼女の耳には届かない。
ーーーーコチラヘ
まるで何かに誘われるように走り続けるユーリ。
彼女が向かう先はルシスの国王がいる、城だった。
兵士の目を盗み、地下から侵入し、見つかれば仲間を呼ばれる前に意識を失わせる。
ユーリの動きには一切の無駄がなかった。
そしてそんなことを繰り返している内に、何時の間にか大きな扉の前まで来ていた。
「あんたっ!何してんだ!こんなことしたら……!」
扉の前で立ち尽くしていると少年が追いかけてきたのか、ユーリの腕を掴み焦ったようにこの場から離れようとする。
「いたぞ!!こっちだ!!」
「ノクティス様!?これは一体どういうことだ…?」
少年に視線を向けることなく扉を見つめていると、あっという間に兵士に囲まれてしまった。
…ノクティス?……貴族の子供とは思っていたがまさか王子だったとは
ユーリも流石にノクティスの存在は知っていた。
運命なのか偶然なのか、ユーリは今でも腕を掴んでいる彼にバレないよう苦笑を漏らす。
私を庇おうとしているとしたら、中々のお人よしですね。
ユーリは少年が掴んでいる腕を逆に捻り上げると、その喉元に剣先を宛てた。
「案内ご苦労。子供を誑かすのは実に簡単ですね。警備もガタガタ、王子様の護衛もどうなってるか知らないが、これではルシスの将来は期待できませんね」
「貴様!!」
「ノクティス様に何をする気だ!?」
嘲笑いながらノクトに剣を付きつけたままゆっくりと扉へと近づくユーリ。
すると、扉が開く音がした。