第2章 中編
アーデンが眠りについて一週間。
ユーリはそろそろ限界だと思い始めていた。
確かにユーリの知らないルシスの歴史を知ることができたが、本当に知りたい情報は見つからなかった。
薄々感じていたが、国立図書館とはいえ全ての情報を公開しているわけではないのだろう。
ユーリはそっとため息を吐いて本を閉じると、同じく目の前で本を読んでいる少年に目を向けた。
ユーリがこの図書館に入り浸って以降、何故か彼もこうして本を読みに来ることがあった。
ユーリの邪魔をするつもりはないのか、ただ大人しく本を読んでいる。
チョコボだけではなく、まさかこの少年にも懐かれたのか?
確かに命を救った事実はあるが、ユーリはルシスにとって敵国にあたる兵士なので複雑な気持ちだった。
「……もういいのか?」
ユーリがぼんやりと考え事をしていると、不意に声を掛けられた。
少年も本を読み終わったのか、何時の間にかユーリを見ていた。
「……そうですね、結局知りたい情報はここにはないようです」
「知りたい情報?」
ユーリの言葉に少し警戒心を露わにした彼。
確かに彼女は何かを探していると言っていたが、その内容は聞いていない。
そんな少年の疑いの視線を感じ取ったのか、ユーリは苦笑して恋人を探していると言った。
「…あんたの恋人が、ルシスにいたのか?」
「…うーん、そう思って調べに来たんだけどねぇ。噂では存在そのものが消されてるって話だけど」
微妙に話が違うが、変に詮索されても困るので適当に流すことにした。
「…そうなのか」
何やらユーリの事情を重く受け止めたのか、彼の表情が僅かに悲しみに染まった。
「あ、いや…そう重く受け止めなくても彼は生きて…」
「…昔、聞いた話で思い当たることがあるんだけど」
ユーリが慌てて弁解しようと口を開く前に伝えられた言葉。
その言葉に、辺りが静寂に包まれた。