第2章 中編
ユーリは獣にとどめを刺すと、少年の方へ振り返る。
一瞬の出来事に唖然としていた少年だが、慌てて礼を述べてきた。
ユーリは気にしなくていいと伝えると、日が暮れるので早く家に帰るよう促す。
少年の身なりを見ると、なんとなく貴族の子供のような気がした。
恐らく夜が危ないと教えられているはずだが、助けた以上彼がこの場を離れるまで見守るしかない。
「…けど、まささっきのような獣が現れたら」
少年の視線は子チョコボへと向けられる。
話を聞くと一昨日に怪我をしているのを見つけて、治るまで世話をしようと思ったと。
ユーリは少年とチョコボを交互に見やり、そっとため息を吐いた。
「分かりました。では私がここで野宿をするのであなたは早く家に帰ってください」
「え?…でもそれだとお姉さんが危ないんじゃ…」
「私は旅の者で戦闘には慣れています。ちょうどこの辺りに用事があったので、数日でよければ付き合ってあげますよ」
子供相手に随分と上から目線になってしまったが、これが私だから今更直しようがない。
本当はもう少し安全な場所で野宿したかったが、この少年を大人しく帰らせる方法が他になさそうなので仕方ない。
ユーリが早速野宿の準備を始めているのを暫く見ていた少年だが、再びユーリが促すと漸く来た道を戻り始めた。
「…やれやれ、私も随分とお人よしになりましたね」
薪を焚くと、ユーリは木によりかかりその火を見つめた。
一応子チョコボも暖まれるように近くに焚いたが、さてこれからどうしたものか。
ユーリがぼんやりと考え事をしていると、漸く安心したのか子チョコボが眠りにつく。
ユーリは何時でも取れるよう剣を近くに置くと、そっとその瞳を閉じたのだった。