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闇夜の雫【FF15】

第2章 中編



ユーリが目を覚まして、すっかり日も暮れてしまった。

何時の間にか隣に居座っているアーデンはユーリの髪に触れたり等好きにしている。

適当に会話を交わしながら、ユーリはどうしたものかと悩んでいた。

アーデンの隙を見て峰内でも狙うか?いや、絶対無理だ。

そもそも眠らないのに意識を失うって概念はあるのだろうか。

だめだ、考えれば考える程無理ゲーな気がしてきた。

「アーデン。私に構わず休んでいいですよ」

「別にオレはその必要ないんだけど」

「それは眠れないからですか?それとも疲れるって概念がないんですか?」

「…そうだね。オレは人じゃないから」

どこか皮肉気味にそう言うと、漸くユーリから手を離しソファーにもたれかかった。










「…あ、いいこと思いつきました。子守歌でも歌ってあげましょう」

「…は?」


ユーリは半ば投げやりな気持ちになり、アーデンの肩を掴むとその身体を自身へと引き倒した。

「…随分と積極的な行動で嬉しいけど、急に何で?」

所謂膝枕の状態になったアーデンは一瞬怪訝な表情を浮かべたが、直ぐに人の悪い笑みを浮かべてユーリを見上げた。

「眠れないあなたに私の素敵な歌声を差し上げましょう」

「それは楽しみだけど、自分でハードル上げて辛くない?」

「いえ全く」

声を殺して笑っている彼に、ユーリも不敵な笑みを浮かべる。

歌なんて生まれてから歌った記憶がない。

上手いか下手か聞かれれば、間違いなく下手だろう。

そもそも子守歌など知らない。

ユーリが知っている歌は、ただ1つだけだった。







「…ティ アデ ベェネ ディク ティオン」

突然異国の言葉を発したユーリに、アーデンは目を見張った。

「ルクス エ テネ ブラエ ティ ドゥク トゥ」

不思議な音程で流れる歌声に、アーデンは身体に違和感を感じる。


ーーーあれ、この歌どこかで…

「レク エィス フィ ファチェ」

ぼやけていく思考回路に、遠い記憶が蘇る。


ーーーまさか、これは…


アーデンは咄嗟に歌を止めさせようとユーリに手を伸ばすが、その手が届くことはなかった。



伸ばされた手がソファーに落ちる。


それでも彼女は歌い続けていた。




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