第2章 中編
ユーリが目を覚ますと、何時の間にかアーデンの部屋に来ていた。
恐らく本人か誰かが運んだのだろう。
不可解な夢の内容に困惑したままソファーから起き上がると、アーデンと目があった。
「おはよう。いきなり倒れたって聞いたけど、具合でも悪いの?」
アーデンはゆったりとした足取りでユーリに近づくとその顔を覗き込んだ。
「そうですね。どこかの宰相が重労働を強いてくるので、疲れてるかもしれません」
そう言ってワザとらしく咳をする彼女に、アーデンは漸く安堵した表情を浮かべた。
「へぇ、それは大変だね。何日か休んだら?」
「そうですね。本人から了承を得たので1週間程休みます」
アーデンの気まぐれな提案に、これはチャンスだと思った。
長期休みなら部屋に籠ってるとでも言って、帝都を不在にしてもバレないかもしれない。
ユーリはどうしてもルシスに行きたかったので、ここぞとばかりに休みの申請を行うことにした。
「ちょっと、どこに行くの?」
ユーリがアーデンの部屋を出ようとした時、腕を掴まれて引き留められた。
「休むので部屋に戻ります」
「ここで休みなよ。オレが看病してあげるよ?」
「余計に悪化しそうなので遠慮します」
そう言って再度部屋を出ようとしたが、中々放してくれない。
「偶には恋人に頼りなよ」
余計なお世話です、そう即答しようとしたらひょいと抱きかかえられた。
そしてそのままソファーに降ろされる。
意外と引かないアーデンに、もしかしてユーリの計画がバレてるのではないのかと内心少し焦った。
「いつになく紳士的ですね。その心遣いはありがたいのですが…」
「ユーリはお昼食べた?まだなら持ってこようか?」
再度やんわり断ろうとするとユーリの言葉をスルーする彼。
これは非常に困った。
勝手に脱走したら余計に怪しまれる。
しかし時間が限られているので早くルシスに行けるなら行きたかった。
ユーリは昼ご飯を取りに行ったアーデンを見送り、そっとため息を吐いた。