第2章 中編
ーーー懐かしい歌声が聞こえる。
小さな家に備え付けてある暖炉の前で、老婆と少女が座っていた。
少女は老婆が口ずさむ歌を楽しそうに聞いている。
「…いいかい、この歌は我が一族に伝わる大切な歌なんだ」
彼女は歌い終わると少女を抱きかかえ、穏やかな口調で話し始めた。
「大切な歌?」
「そう。歌い方によっては救いにも破滅にもなる歌なんだ」
「……私、毎日聞いてるけど?」
「心配する必要はないよ、私はこの歌の本来の力を発揮できないんだ。唯一使いこなせた先代も数年前に亡くなってしまった」
先代が亡くなったのは、事故か他殺か。
少なくとも老衰や病ではなかった。
「じゃぁもう誰もその力ってのを使えないの?」
「どうだろうね。一族の生き残りも少ないと聞く。だから…」
ーーーーもしあなたがこの歌を歌う時が来たら…