第1章 前編
そろそろ終戦になるとのことだったので、オレは先に部屋に戻ることにした。
元々オレの担当は軍事関係ではないし。
そして先程聞こえてきた爆発音。
誰かが、オレの部屋が被害にあった可能性があると言っていた。
だから確認も含めて戻ってみると、被害にはあっていたが予想外の人物がそこにはいた。
彼女は確か、名前は忘れたが一般兵だったはず。
女で兵士など珍しいので何となくその姿には覚えがあった。
そして彼女の足元に落ちている箱。
こいつがソレが何なのか知って、見たのかは分からないが、先手を打たせてもらうことにした。
悪いが回答によっては、この場で死んでもらうしかない。
オレが長年かけてやっている計画を、今ここで邪魔されても困るからだ。
だが、返ってきた答えは、オレの想像を超えたものだった。
「……くっ、ははっ」
久しぶりに気分が高揚する感じがした。こんな感覚、何百年振りだろうか。
新しい玩具を見つけたかもしれない。そう思ったのだ。
「人の恋路を笑わないで欲しいのですが」
「あぁ、ごめん。君、名前は?」
「え、……ユーリと言いますが」
「そう。じゃぁユーリ、君はどうしたい?」
「…え」
まさか選択肢を委ねられると思ってなかったユーリは、言葉に詰まった。
この血塗れでされた胡散臭すぎる告白を、彼は間に受けるのか?
いや、彼ほどの知能があればその可能性は低いのだろう。
と言うことは、腹の探り合い、駆け引きが始まったのか。
もともとそうするつもりだったが、出来れば振られた後で話を進めたかった。
その方が色々と都合が良かったからだ。