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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



偉い人とは思っていたが、まさかこの国のNo.2の部屋とは思わなかった。
話したことなど一度もないが、流石に顔は知っている。

誰だ運がいいと言った奴は。

ユーリはそっと溜息を吐くと、この状況を説明しようとした。
流石にわざとではないと説明し謝罪すれば、許してくれるだろうと思ったのだ。





「もしかして、ソレ、見たの?」

だが、私が口を開くよりも先に放たれた言葉。

ポーカーフェイスが得意な私の表情が、僅かに引きつった。
気配は感じなかったが、もしかして見られていたのか?

…いや、カマをかけられただけかもしれない。

最初こそ鋭い視線を向けていた彼だが、今は胡散臭い笑みを浮かべている。

ユーリは気づかれないようにそっと息を吐き出すと、今後の流れを変更することにした。


「すいません、実は私、あなたのファンなんです」

「…は?」

静かに放たれたその言葉。相手はあの宰相だ、普通にやり取りしても敵わないだろう。
笑顔を貼り付けていた彼の表情が、少しだけ変わった。

「戦いに巻き込まれてこの部屋まで吹き飛ばされました。そしてここが、もしかしたらアーデン宰相の部屋ではないかと思い勝手に物色していました。ソレ、が何を意味するか分かりませんが、こんな状況でストーカーよろしく部屋をウロウロしてしまい申し訳ありません。しながい一般兵の叶わない恋だと憐れに思い、許してもらえませんか?」

よくもまぁ、ここまでペラペラと口が回るものだと、自分自身でも感心していた。

だが、私は先程見てしまった。
この国の秘密、いや、彼の秘密を。

生きてここから逃れらる可能性は低そうだが、とりあえずやれるだけのことはやるつもりだった。


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