第2章 中編
ユーリがイオスの歴史を勉強し始めて、1カ月が経った。
偶に帝都から出て情報収集するときもあるが、何故かアーデンが付いてくる。
本人曰く護衛とのことだが、それは本来兵士である私の役目ではないのだろうか。
取り合えず目的の邪魔をする気配はないので黙っているが、着いてくるくらいなら素直に教えてくれればいいものを。
彼なら、私が何を調べてるのか直に検討が付くはずだ。
「…はぁ、やはりどれだけ読んでも分からないな」
ユーリは分厚い歴史書を閉じると、ため息を吐いた。
そう簡単に行くとは思っていないが、ここまで何も情報が掴めないと、意図的に消された可能性がある。
「……ルシス…か」
冗談か本気か分からないが、アーデンが滅ぶのを願っている国。
まだルシスだけ行ってないが、そもそも今の帝都とルシスの情勢はあまりよろしくない。
ダメもとでアーデンに頼んでみたが、案の定却下された。
分かってはいたものの、完全に打つ手を失ったユーリは、どうしたものかと頭を悩ませた。
脳裏に過るのは神話での出来事。
神々と深い繋がりがあるルシスであるから、アーデンに関する情報があるとすればもうここしかないと思っていた。
「さて、どうしたものか」
黙って忍び込んでもいいのだが、あのアーデンにバレずに数日間不在にすることなどできるのだろうか。
一歩間違えれば国際問題に発達するようなことをユーリは考えていたが、彼女は本気だった。
もうここまで来たら後には引けない。
何が何でもアーデンの過去を調べる気でいたのだ。
ーーーー♪
窓から差し込む夕日をぼんやりと眺めていると、不意に歌が聞こえた気がした。
ーーーこれ…は………から…
不審に思って辺りを見渡すと、突然激しい頭痛に襲われる。
神凪…六神…寄生虫…クリスタル………ルシスの王子
脳内では処理しきれない情報が一気に流れ込んできて、ユーリは思わず頭を抱え込んだ。
ーーーーいい?この歌は先祖代々伝わる歌で…
なんなんだ、これは……
ーーーー彼を救えるのは、神凪の血を引くあなたしかいないの
知らない声と歌が脳内に鳴り響く。
気が付けばユーリは意識を失っていた。