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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



車内の中では重い沈黙が流れていた。

アーデンは無言でユーリの手当てをしている。

あの後、アーデンはユーリを掴まえると、そのまま近くに止めてあった車に放り投げるように押し込んだ。

一瞬の出来事でユーリは唖然としていたが、小さな爆発音が聞こえたかと思うと、アーデンが車に乗り込み移動し始めた。

そして少し離れた場所まで移動すると、ユーリがいる後部座席へと乗りこみ、今に至る。

何か話すべきかと迷っていたが、アーデンから流れてくる不穏な空気に言葉が見つからない。

よく分からないが、彼は怒っているのだろうか。

最後に冗談だと言っていたから、彼は痛みは感じないかもしれない。

だけど例えそうだとしても、彼を傷つけていい理由にはならないと思ったのだ。

先ほどの敵の存在は彼も気づいていたかもしれない。

わざわざ私が庇う必要はなかったかもしれないが、彼が死なないのをいいことに、黙って見過ごすのは出来なかった。









「……はぁ」

ユーリはこの重い空気に耐え切れなくなり、ついにため息を吐きだした。

すると目の前の男の眉が僅かに跳ね上がる。

「……よく分からないのですが、怒ってるんですか?言いたいことがあるなら言ってください」

手当てが終わったのを見計らい、ユーリは重い口を開く。










ガッ

すると、突然片手で両頬を掴まれる。

遠慮のない力で顎を捕らえられ、ユーリは眉を潜めてアーデンを睨みつける。

「……正直、オレ自身だってよく分からない」

「…はぁ」

「ユーリを振り回して楽しんでるつもりが、気が付けばこっちが振り回されてることだってあるし」

「自覚してたんですか」

捕まれている頬は痛いが、ユーリは平然と会話を続ける。

視線を逸らすことなく、アーデンを真っすぐ見つめる。

そしてその視線に耐え切れなくなったのか、彼はゆっくりと手を離した。

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