第1章 前編
ユーリは早く戦場に戻らねばと思い部屋から出ようとしたが、不意にこの部屋が誰のものなのか気になった。
物が少なく殺風景だが、部屋の広さ、僅かに配置してある家具の豪華さ、そして大量に積まれ本。
まさかここは偉い人の部屋なのだろうか。
もしここがただの倉庫等であれば、気にすることもなかっただろう。
しかし、不本意とはいえ、部屋を荒らしてしまい、そのまま立ち去るのも気が引けた。
それが、この国に属する偉い人なら尚更だ。
なぜ、偉い人と程なくして断言できたのか。
ユーリはどうしたものかと部屋の中をウロウロしていると、色々と研究関係の資料を見つけてしまった。
そしてこれ以降はほぼ無意識にやってしまったことなのだが、私が吹き飛んできた衝撃の影響か、厳重に保管してあった箱が割れていた。
それを手に取りそっと開けた私は、これまたそっと閉じて元の位置に戻した。
第三者から見てみれば特に何ともない動きだが、私は表には出さないもののをかなり動揺していた。
「何してんの?」
そして聞こえてきた声。
私はゆっくり振り返ると、そこにはアーデン宰相が立っていた。