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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



話すといってもたいした話ではない。

気が付けば、5年ほど前に瓦礫と化した場所で倒れていた。
記憶を辿るも、何も思い出せない。

親も、生まれた場所も、自分自身のことさえ。

恐らく記憶喪失なのだろう。

そんな現状についていけなかったが、生きて行くためには受け入れるしかなかった。

そこから先は、まぁ色々苦労したが、なんとか軍人として雇ってもらい今に落ち着く。

そんなユーリの話を少し意外そうに聞いているアーデン。

女でありながら軍人として雇われているんだから、色々訳アリだと思っていたが。

「以上で私の話は終わりです。さて、次はあなたの話をしてください」

珍しく黙り込んだアーデンに居心地が悪くなったのか、話題を変えた彼女。

「話って何を聞きたいの?」

「あなたが私に聞いてきたものと同じです」

ユーリだってアーデンのことを何も知らない。

両親のことも、出身も、生い立ちも。

別に知らないままでも良かったが、自分だけ話すのは何となく不公平な気がしたのだ。

といっても私もたいした話はしてないので、そこを突っ込まれたらそこまでだが。

「……それってオレの過去のことだよね?」

そうだと言っているのに、まるで確認するように尋ねてくるアーデンに違和感を覚えたが、取り合えず頷く。

「教えてもいいけど、知ったら二度と引き返せなくなるよ?」

「あっ、じゃぁいいです。遠慮します。教えなくて大丈夫です」

アーデンの言葉に即座に拒否の言葉を示した彼女。

そんなユーリの言葉に、アーデンは声を殺して笑った。

「遠慮しなくていいのに」

そう言ってカクテルに口を付ける彼は、何時のも彼だ。

先ほど一瞬だけ空気が変わったけど、あれはなかったことにしよう。
お互いに、知らない方が幸せなことだってあるはずだ。

「まぁ、どうせもう引き返せないけどね」

「へ?」

ユーリが黙々と料理を口に運んでいると不意に聞こえてきた言葉。

目線を戻せば、そこには不敵に笑っている彼の姿。

「そんな警戒しないでよ、冗談だから」

そう笑っているが、まったく安心できる要素がない。

ユーリはジト目で彼を睨みつけると、再び話題を変えたのだった。


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