第1章 前編
「アーデン宰相は人気がありますから、ぼんやりしていると取られますよ?」
「…はぁ…まぁ…」
彼女はアーデンの恋人だということを濁していたが、アーデンから渡された金額と注文内容を見て、普通の関係ではないのは直ぐに分かった。
例え接待だとしても、帝国No2の彼がするのは不自然だ。
だとすれば、答えなど限られてくるだろう。
「そろそろ終わる?」
二人の間で暫し沈黙が流れていると、不意にアーデンが現れた。
「…っ、お待たせして申し訳ありません。ちょうど今終わったところです」
定員は正気に戻ると、彼女の座っていた椅子を回し手を取った。
促されるまま立たされアーデンの元に連れていかれるユーリ。
「…へぇ」
ユーリに無遠慮に注がれる視線。
何なんだと負けじと睨み返しても、彼は笑みを浮かべているだけだった。
慣れない服や髪型、化粧を施されて落ち着かない。
こんな格好、自分に相応しくないと分かっていたので、どうせ嫌味の1つでも降ってくると思っていた。