第1章 前編
オルティシエについて何をするのかと尋ねると、ショッピングや食事、観光名所めぐりなど、本当にデートらしいことをするようだ。
いや、最初はオルティシエの首相と会談をする予定のようだったが、それも直ぐに終わった。
通された控室に戻ってきたアーデンは、今日の仕事はもう終わりと言っていた。
今日の仕事は終わりって、一体何時始まって終わったのだ。
彼と別れて一時間も経ってないぞ。
ユーリは何か言いたげな表情をしていたが、それに構うことなく二人仲良く街中を散策することになったのだ。
まず最初に連れていかれたのがお洒落なブティック。
ユーリを定員に預けると、適当にこの子に似合いそうなものをと一言言って彼は去っていった。
その後は完全なお人形さん状態で好き勝手されまくった。
「久しぶりにお見えになったと思ったら随分とかわいらしいお嬢さんをお連れで…」
服が粗方決まれば次は髪をセットされていく。
その間定員は気さくに話しかけてくれるが、生憎ユーリは人づきあいが得意な方ではないので、乾いた笑みしか浮かべることができなかった。
久しぶりってことは、他の女性とここに来たことがあるのだろう。
聞いてもないのに勝手にアーデンの話しをしてくる彼女の言葉を適当に流していると、もしかして恋人ではないのですかと疑われた。
「……さぁ、どうでしょう」
アーデンの話にさして興味を示さないユーリ。
疑われても仕方ないだろう。
しかし幾ら帝都から離れているとはいえ、あの宰相と恋仲であると簡単に公言していいか分からなかった。
どこか遠い目をしながらぼんやりとしているユーリに、定員は怪訝な表情をする。
過去にアーデンが連れてきた女性達は、どれも慎ましくておしとやかな感じの人だった。
大人しいと言えば目の前の彼女にも当てはまるが、何か違うような気がしたのだ。