第1章 前編
私は、今の状況に非常に困っていた。
目の前には辛気臭い笑みを浮かべるアーデン宰相。
本当に、一体なぜ、こうなった。
事の発端は、あのニフルハイム帝国に攻め込んだ、勇猛果敢な小国のせいだろうか。
私は女でありながらニフルハイムの軍に所属する一般兵である。
傭兵として一時的に雇われる女もいるが、兵として所属する物好きな女は、恐らく私1人だろう。
私としても物好きなわけではないが、両親を失い路頭に迷っていた私の選べる道など限られている。
幸いにも戦いのセンスはあるようで、今までなんとか生き残っていた。
敵が国に攻め込めば、ただのしがない一般兵の私に出動命令が出るのも当然だ。
詳しく話すのは面倒なので色々と端折らせてもらうが、向かってくる敵を適当にあしらいながら終戦を待っていると、何と私の身体が吹き飛ばされた。
油断していたわけではないが、向こうに魔法が使える奴でもいたのだろうか。
めでたく遥か上空に舞い上がった私は、そのまま何処かの部屋のガラス戸を打ち破り部屋の中に倒れこんだ。
痛む身体に鞭打って起き上がる私は、見事に血塗れだ。
ここで死なない辺り、私も中々運がいいかもしれない。
この時は、そう思っていた。
まさかこれが、私の人生の分岐点になるとは、この時は全く考えもしなかった。