第1章 前編
「もしかして、今更怖くなったの?」
「いえ、あなたが不死者で無敵だという事を忘れていただけです」
ユーリは再びココアに口付けた。
「忘れるほど、オレの存在って薄いのかぁ。悲しいなー」
「それはないので安心してください。濃ゆすぎて、脳内が感知するのを拒否ってるだけなので」
「…ねぇ、もしかしてユーリってオレのこと嫌い?」
「好きか嫌いかと聞かれれば好きです」
「あれ、意外にも好印象なの?」
「究極の2択なので、ギリギリそっちに偏ってるだけです。こう見えて、何気にあなたとの会話が楽しいと思えることもあるので」
「そりゃ、あれだけ貶せば楽しいだろうね」
アーデンは何が可笑しいのか、声を殺して笑っていた。
貶されて嬉しいのか?だとしたら相当なドMなのか?
「自分で言うのもなんですが、私の辛辣な言葉に怒りどころか笑いがでるなんて、もしかしなくてもMなんですか?」
「さぁ、それは時期に分かるんじゃない?」
「…あっ、何か分かったからもういいです」
ユーリのその言葉に、再び笑う彼。
そもそもあんな研究してる奴がMとか絶対ありえないだろ。
寧ろSを通り越してただの狂人だ、その方が似合っている。
ユーリはそんなことを考えながら、残りのココアに口付けていた。