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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



「そうだ。折角恋人同士なんだから、名前で呼んでよ」

「何ですか急に」

ユーリの隣に腰をかけたアーデンは、そのままユーリの腰を引き寄せてその顔を覗き込んだ。

「近いんですが」

「ユーリってこういう事あんまり慣れてないよねぇ」

「あなたと違って場数を踏んでないですから」

「それって褒めてるの?」

「さぁ、解釈はお好きにしてください」

ユーリはココアが零れないようにテーブルに置くと、彼の身体を押しやった。
だが、当然動くわけでもなく、逆にその手を取られ見つめ合う形になってしまった。

「ほら、名前」

終始楽しそうに笑っている彼に対し、ここで動揺したら負けだと思い平常心を保つことにした。

「アーデン宰相」

「宰相はいらない」

「おっさん」

「…あんまり素直じゃないと、強行手段に出ようかなぁ」

「アーデン」

「そうそう、物分かりのいい子は好きだよ」

そう言ってユーリの頭を撫でる彼は、完全にこの状況を楽しんでいた。

「こうやって見ると親子のようですねぇ」

「…へぇ?じゃぁ恋人らしいことしようか」

そう言うや否や、ユーリの抵抗をものともせずソファーに押し倒した彼。

彼女の表情が僅かに引きつった。

「すいません嘘です。立派な恋人同士なのでティータイムの続きをしましょう」

「オレはこっちがいいなぁ」

そう言ってユーリの頬を撫でる彼の手つきに、本格的に身の危険を感じる。

「やったことないのでちょっと待ってください」

「…あれ?そこは素直に認めるんだ」

「えぇ、我が身は大切ですし」

余りにも正直に己の性事情を話したユーリ。

その姿に、少し考える素振りを見せたアーデンは、彼女の身体から身を引いた。

「…意外と紳士なんですね」

ユーリは一瞬呆けた表情になったが、ゆっくりと起き上がった。

「んー?無理やりしてもいいけど、今はまだいいや」

「前言撤回します。あなたは女の敵だ、悪魔だ」

「ははっ。あんまり可愛くない事いうと、オレの気が変わるかもよ?」

そう口元を歪めて笑う彼に、ユーリは瞬時に口を閉ざす。

完全に忘れかけてたけど、この人普通の人じゃないんだ。

下手に逆鱗に触れて我が身を滅ぼすようなことは、避けることにしよう。


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