• テキストサイズ

闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



「で、いつから補佐をすればいいんですか?」

だが、そう言ったところで現実が変わるわけでもない。
ユーリは色々諦めると、具体的に話を進めることにした。

「ん?今日から?」

「わぁー早速今日から宰相の顔を毎日拝めるのですね。嬉しいー」

「心の篭ってない言葉をありがとう」

ユーリの言葉を特に気に留めてないのか、慣れた手つきで書類を片付けていく彼。

普段からそのくらい真面目なら、少しくらいは見直してもいいのだが。

「…ん?もしかして見惚れてた?」

「宰相の頭の中はどうなってるんですか?お花畑か何かですか?」


ユーリの冷えた視線に、アーデンは口元に笑みを浮かべると、特に気にした様子もなくそのまま仕事に戻った。

二人の間に沈黙が流れる。


「…あの、用がないなら帰っていいですか?」

仮にも恋人に対してそんな言い方はないだろうと思うが、生憎私たちの関係はそんなに甘くない。

この沈黙を心地よいと感じるには、まだ早い。
というか未だに恋人同士になった事実が信じられず、あれは冗談だったんじゃないかと思うこともある。

「用ならあるでしょ?せっかく二人きりなんだからさ」

「…はぁ。あなたは忙しそうにしてますが」

「構って欲しいの?」

「いえ全く」

「ほんと可愛げがないねぇ」

「よく言われます」


可愛げを求めているのなら、是非とも他の人に乗り換えることをお勧めします。

そう言おうとしたが、不意にアーデンが立ち上がったので伝えるタイミングを失った。

「まっ、今日はもう終わりなんでしょ?ゆっくりしていきなよ」

そう言って部屋の奥へと向かった彼。

ゆっくりも何も暇なんですが。

ユーリは彼が消えていった方へ視線を向けていると、程なくして再びその姿を現した。

手にはマグカップを持っており、それをユーリが座っているソファーのテーブルに置く。

「…ありがとうございます」

少し意外な彼の行動にリアクションに困ったが、何とかお礼だけ述べると美味しそうなココアに口を付けた。



/ 105ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp