第1章 前編
ーーーユーリならさ、オレを受け入れてくれると思って
気が付けば、そう口走っていた。
どうやら思っていた以上に彼女のことを気に入ったようだ。
あそこまで踏み込んで話したことなど、今まで一度もなかった。
と言っても、どれも証拠がなければ信憑性にかけるものだし、ただの一般兵が騒いだところで何も変わらないだろう。
まぁ何となく彼女は、黙ってそうな気がしたが。
別に信用してるわけではない。
誰かを信用するなど、遥か昔にやめた。
しかし自らリスクを背負うことは珍しい。
彼女はオレの秘密を知っても尚、生かされている。
それが吉と出るか、凶とでるか。
とりあえず彼女には、オレを楽しませてもらわないと。
永遠を生きる中で、少しでもオレを楽しませてくれれば、それでいい。
あぁ、そういえばシガイ化させるのを忘れていたな。
まぁ今更どうでもいいか。彼女なら、シガイ化させたところで何も変わらないだろうし。
本当に、面白い。
アーデンは自室に戻ると、備え付けられているソファーに腰を下ろした。
時間帯にして、もう深夜だ。
ただ、眠りを必要としない彼にとってはそんなことはどうでもいい。
夜が明けるまでの長い間を、ただ生きていく。
だけどそれが、今日から少しだけ変わった。
脳裏に浮かぶのは、ユーリとのやり取り。
暫くは退屈しないで済みそうだ。
アーデンは口元に笑みを浮かべると、ゆっくりと瞳を閉じた。
ーーー本当は、忘れてたなんて嘘だ。
なんとなく、ユーリにはあのままでいて欲しかった。
オレの様に穢れることなく、あのままの姿で。
まさかそんな思考を持つ日が来るとは思わなかった。
その考えに不快感を感じるかと思ったが、そうでもない。
ただ、慣れない感覚に、少しだけ戸惑っていた。