第1章 前編
「それでは、アーデン宰相。安らかな眠りを」
「随分と切り替えが早いんだね」
「もしかして怖気づいたんですか?」
「まさか」
ユーリが剣を構えると、その瞳を伏せた彼。
傍から見たら丸腰の彼が武器を持っているとは思わない。
いや、あの分厚いコートの下がどうなっているのか分からないが、そんなことどうでもよかった。
「…」
ユーリは地を蹴り、無駄な動きは一切なく、その刃を彼に向けた。
さぁ、この茶番劇をさっさと終わらせろ。
どうせ、最後は嘲笑って私を殺すのでしょう?
それならば手加減などする必要はなかった。