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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



次の日。

ユーリとの出会いは、意外にも早く訪れた。

わざわざアーデンが情報網を使わなくても、向こうから勝手に目の前に現れた。
いや、目の前に現れたのは向こうにとっても不本意なものなのだろう。

あからさまに歪んだ表情が、そう語っていた。

「やぁ、数時間ぶりかな?随分と突拍子のないことしてたけど、大丈夫だった?」

アーデンは笑顔を顔に張り付けて、目の前で荷物を抱えているユーリに近づく。

その大荷物、といってもそこまで大きくないが、恐らく亡命でもしようとしているのだろう。
ユーリの身体は、手当された跡がある。

自分でやったのか、他人がやったのかは分からないが、少しだけ面白くなかった。

「こんな早朝に、こんな場所でまた出会うなんて、宰相という立場は余程暇なのですね」

こんな場所と言っているが、ここはまだ帝都グラレアにある市街地。
寧ろ、まだこんな近くにいたことの方が驚きだ。

「昨日から暇人扱いしてるけど、オレそんなに暇じゃないんだよねぇ。先日の戦争で片づけないといけない書類が山のようにあってさ」

「そうですか。それならば宰相らしく、職務に専念してください」

「でもそんなことより、もっと重要な仕事が出来てさぁ。例えば、目の前で亡命しようとしている人物を捕まえるとか?ほら、国の重要機密を知っているわけだし、流石にそれを見逃したとなったら、オレの立場も危ういだろうなぁ」

間一髪開けずに返って来た言葉。
ユーリの表情は、僅かに引きつった。


「それはご愁傷様です。重要機密を持ち逃げされないよう、早く捕まえに行ったらどうですか?」

「…それ、本気で言ってる?」

二人の距離感は一定を保たれたままだ。

一人は無表情で、もう一人は笑顔を顔に張り付けている。

一瞬の隙も見せまいと、二人の睨み合いは続く。

いや、どう考えてもアーデンの方が上手だろうし、気を張ってるもユーリだけだった。

さっさと捕まえずにこの状況を楽しんでいるあの男も、期待通り性格が悪い。

それもと、もしかして戦術は皆無なのだろうか?

ありえないと思いつつ、昨日あっさり私に逃げられた辺り、間違ってなもしれない。





まぁ、あそこから飛び降りられれば、どんなに戦術に長けてようが、捕まえようがないが。

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