第1章 前編
駆けつけた部下に部屋の片づけを任せ、ユーリの後を追った。
その手には、もちろんあの箱の存在もある。
「あれ?」
アーデンはユーリが落ちたであろう場所へ行きその姿を探したが、どこにも遺体らしきものは見当たらなかった。
もしかして他の誰かが先に見つけたのだろうか。
そう思って心当たりのある場所を探してみたが、どうやらそれも違うようだった。
「…へぇ。本当に逃げたんだ」
自然と漏れたその言葉。
まだそうと決まった訳じゃないが、遺体が見つからないことが全てを物語っていた。
アーデンは口元に歪んだ笑みを浮かべると、次の手を考えた。
生きているのなら好都合。今更逃がす気なんてさらさらなかった。
あの怪我でこの時間帯だとそう遠くには行けないだろう。
無理に焦る必要もない。
アーデンはそう結論付けると、来た道を引き返した。
あぁ、本当に楽しくて仕方ない。