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闇夜の雫【FF15】

第1章 前編



私をシガイ化させてどうするつもりだ?
研究の材料にでもするつもりなのたろうか。

もしそうなら、かなり嫌すぎる。



「あいにく私の属性は風なので、闇ではないんですよ」

「風?どの辺が?」

「飄々としててつかみどころのない性格とか?」

「自覚してるんだ」

「いえ、知人からそう言われました。貴方には負けると思いますが」

「この状況でまだそんなこと言える君には感心するよ」

「ありがとうございます」

「うん、褒めてないけどね」

ユーリの言葉に、大袈裟に肩を竦ませ呆れた表情をつくるアーデン。
何かにつけて感謝の言葉を使ってくるユーリは、もちろんわざとしているのだろう。
だけど、そろそろタイムリミットのようだ。

僅かに聞こえてくる、こちらへ向かってくる足音。

この部屋が被害にあったと聞きつけ、誰かが向かっているのだろう。
彼女との会話は楽しいが、終わりにしなければならない。









「因みに今なら飛べる気がします」

アーデンが一歩、ユーリへ近づいた時放たれたその言葉。
一瞬理解ができなかったアーデンは、その足を止めて怪訝な表情で彼女を見る。


だけどユーリは、そんなアーデンには気にも留めず、その窓枠に足をかけた。












たって私は、『風』ですから。


そう笑ったユーリは、なんの迷いもなく飛び降りた。


「…は?」

初めて見たユーリの笑顔に気を取られて、アーデンは反応が遅れた。
割れた窓に近づき下を見るが、暗闇に染まっており何も見えなかった。
時間帯にして深夜。

彼女はこの高さから、なんの迷いもなく飛び降りたとでもいうのか?
普通に考えて絶命してもおかしくない高さだ。


「……っく、ははっ!」

アーデンは本日何度目になるか分からない笑い声を上げた。

まさかこのオレが、ここまで振り回されるとは。

「死ねばオレから逃げられると思ってるならまだまだだねぇ」

例え死体だとしても、シガイ化はできる。
だが、あの減らず口が聞けなくなるのは少し寂しいかもしれないが。

不意に先ほどの彼女の笑顔を思い出し、心に違和感を覚えた。




それが何なのか、まだ彼には分からなかった。


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