第2章 中編
アルテマから与えられた使命は、クリスタルにこの星の全ての闇を封じ込めるというものだった。
そしてその力を使えるのは、ユーリただ一人。
アルテマはルシスの闇を一か所に封じる計画を何千年も前から考えていたが、その方法がどうしても分からなかった。
しかし今回は何故か、クリスタルがそれに力を貸そうとしている。
本来は一番汚れを嫌うはずのその存在。
一体どういう風の吹き回しかは分からないが、ありがたく利用させてもらうことにした。
この星で一番の闇を抱えていたアーデンの粒子を既に取り込んでいたおかげか、そう時間が経たない内に彼女の歌は終わりを告げた。
辺りが再び静寂に包まれると、ユーリは拾った指輪を指に嵌めて、闇に包まれたクリスタルへと足を運ぶ。
これが彼女の最後の使命だ。
ぶかぶかのその指輪は、2千年前の王の指輪。
その指輪があれば対をなす世界という場所にいけるらしい。
人の身では決して行き来できないその世界。
そして王のみが行けるその場所になぜユーリが行くことができるのか。
それは、アーデンがくれたこの指輪のお陰なのだろう。
指輪を嵌めた瞬間、激痛が彼女を襲った。
だがそれも、声を押し殺し耐えていると痛みは次第に消えていった。
どうやら指輪はユーリを受け入れたようだ。そしてクリスタルもユーリを拒む気配はない。
全ては、世界と…アーデンの為に。
ユーリは深く息を吐き出すと、その身をクリスタルへと投じた。