第2章 中編
ユーリが向かった先はルシスのクリスタルの間。
帝国の攻撃で廃墟と化したそこは、侵入するのに時間は掛からなかった。
ユーリは瓦礫に覆われたその部屋に辿り着くと、辺りを見渡しため息を吐いた。
なんとなく以前と同様、呼ばれている気がしてここまで来たがこれからどうすればいいのか分からなかった。
アルテマが来る気配もなければ、クリスタルの反応もない。
ユーリはどうしたものかと部屋の中を歩き回っていると、ふと足元に何か当たった。
小さな金属音を慣らして転がったそれは、夢の中でアーデンがくれた指輪。
なぜここにそれがあるか分からなかったが、思わずそれを手に取った。
「……っ」
すると一瞬で辺りは眩い光に覆われ、気が付けば目の前に黒ずんだクリスタルの姿があった。
ユーリは唖然と手元の指輪とクリスタルへと交互に視線を送る。
クリスタルが穢れたのは私のせいだが、クリスタル自身もそれを拒む気配はなかった。
だからあの行動には、意味があると思っていたのだ。
ーーーー漸く時が来た
ユーリが唖然とクリスタルを眺めていると、漸くアルテマが現れた。
気のせいかもしれないがその姿は傷ついているように見える。
もしかしたらバハムートとひと悶着でもあったのだろうか。
ユーリがそんなどうでもいいことをぼんやりと考えていると、アルテマからある使命を言い渡された。
それを聞いているユーリの表情は変わらない。
寧ろ、心のどこかで察してた。
だけど、それでアーデンが今度こそ救われるならそれでよかった。
ユーリはゆっくりとした足取りでクリスタルの正面に立つ。
~♪~♪
彼女が紡いだその歌は、滅びの歌。
ユーリのその歌は、世界中から闇を呼び寄せた。