第11章 其の十一
「天下五剣……ですか……」
「主さん、すごいですね」
縁側に座って、洗濯物を干している堀川と会話を交わす桜華。
つい先ほどまで審神者部屋で話をしていた三日月宗近について知るべく、刀図鑑を開いて感嘆の声を上げる。
三日月を顕現する直前に見た夢。
それは、常闇の中に浮ぶ鋭い三日月と雲の流れ、美しい閃光の先には狩衣を纏った男士の姿。やはりあれは三日月宗近であったのだ。
「三日月宗近は天下五剣の中でも最も美しいとされています」
「確かにお美しい方でした」
「そうですね。でも、うちの兼さんも……」
「かっこいいです」
「そうでしょ」
堀川は洗濯物を全て干し終えると、桜華の隣に腰を掛けた。
覗き込んだ刀図鑑には、まだまだたくさんの刀たちが並べられている。
「う~ん。大きな刀が欲しいですね」
「えっ?」
審神者の突然の申し出に堀川は驚いた。
実はこの審神者、余り欲がないというか、刀剣に関しての知識が薄いというか、与えられた刀に励起を送り、育てるというタイプで、今まで刀に関して欲したことがないのだ。
「太刀ではダメか?」
審神者の話に驚いていると突然、背後から声がかかる。今しがた話題に上っていた三日月だ。
もちろん今は本丸の中であり、刀は携えていないが、確かに太刀は大きさがある。
三日月は、堀川とは反対側の桜華の隣に腰を掛けて、自ら持って来た茶を啜った。