第11章 其の十一
「三日月様の太刀も大きくて、とても頼りにしています」
「ふむ」
三日月は懐から茶菓子を取り出すと、桜華と堀川にひとつずつ渡す。
「ですが、この本丸に太刀は三日月様と燭台切様の2振りのみ、刀剣の刀種には大太刀なるものがあると」
桜華は、刀図鑑のいくつかのページを開いて見せた。
「そうさのぉ、確かに大太刀は俺たちよりも大きいかもしれんなぁ」
「かも?」
「見た目の大きさならば大太刀が一番だ。しかし、大きければよいというものでもないぞ」
三日月はククッと笑いながら、刀図鑑を眺める。
「主は勉強熱心なのだな」
「私は、知識が少なすぎて皆様にご迷惑ばかりかけてしまいますので、少しでもできることをやりたいと思っているのです」
「そうか、ならば博識な刀剣がくると良いな。石切丸は俺も懇意にしている」
桜華は三日月に促されて石切丸のページに目を移した。
「やはり大太刀は大きいですね」
「大太刀だからなぁ」
なんだかのんびりとしたやり取りに、その場にいた堀川もほっこりとした表情になる。
「大太刀は数も少なく、格式の高い物が多くあると聞きますから、主さんも無理せず顕現してくださいね」
「そうだな。俺が顕現された時の様になっては困る」
2人の言葉に桜華はやや困った表情を浮かべて、再び図鑑に目を落とした。
大太刀が欲しいとは言ったものの、まだまだ顕現されていない刀は多い。
本丸の刀剣も20を超えて、だいぶ出陣や遠征は楽になってきたが、まだまだ必要なはずである。
しかし、今日はすでに三日月を顕現させているし、おそらく倒れてしまったので明日は顕現の許可が下りないだろう。
「主よ。焦る必要はない」
「三日月様……」
三日月は、桜華の手に自分の手を重ねるとそっと、それはゆっくりと撫でて、彼女の焦る気持ちを落ち着かせてやった。
何と不思議な方なのだろうと桜華は、その温もりを肌で感じる。
「主、そろそろ遠征組が帰還するよ」
少し離れたところから加州の声がして、そちらの方へ振り向けば一緒に畑に行っていたのであろう燭台切の姿も見えた。