第1章 其の一
この本丸の主様……名を『桜華』と言い、霊力はそれなりに強いのに少しばかりおっちょこちょいというか天然というか霊力の調整がうまく熟せていない。
本丸に赴任当初、初期刀の加州清光を顕現した時にも一事件あったのだが、詳しい話は後にしよう。それを知っていた加州は、今回、主が4振りを同時に顕現すると言い出した際、全力で止めたのであるが「絶対大丈夫」と言い張る主の言葉に負けてそれを実行に移した。
その結果が、この丸2日間である。
「反省してよね」
そういった加州の言葉が胸に突き刺さる。
苦笑いを浮かべながらも、主が復活したことが皆心底嬉しくて、同時顕現された4振りはそれぞれに自己紹介を終える。五虎退に至ってはまだ寝ぼけ眼ではあったが、新たな主に会えたことでとびきりの笑顔を向けていた。
薬研は滋養によいという薬を取りに行き、歌仙は主の為に粥を作りに行く。立ち上がりたいと言う主を支えた加州と和泉守はゆっくりと主の歩に合わせて窓際へ誘い、その後を五虎退がついて歩いた。
「月が綺麗」
「暢気すぎるよ…」
加州のため息も気にしないのが桜華の良いところ。
そんな桜華に初めて接した和泉守はそのかわいいとも綺麗ともとれる笑顔に胸をときめかせていた。