第1章 其の一
薬研の薬と歌仙の粥のお陰か、はたまた彼女の霊力の賜物か、桜華はどんどん力を取り戻していく。
翌日には、五虎退と一緒に庭先でシャボン玉を作って遊んでいる姿があった。
「主、少しは仕事しないと…」
自分も一緒に遊びたい気持ちを押し殺し、縁側から加州が叫ぶ。
その声に動きを止めた桜華と五虎退は顔を見合わせてニコッと笑った。
「加州さんも一緒にやりませんか?」
五虎退は加州の元に駆け寄ると新しいストローを差し出しシャボン玉遊びに誘う。思わず手に取ってしまったストローを口にはさんだ加州は桜華の隣に歩み寄りとりあえずシャボン玉を吹いてみた。
キラキラと太陽の光を反射して七色に光るシャボンはフワッと上がってパッと弾ける。
「……楽しいの?これ」
微妙な面持ちで桜華の顔を見る加州に、桜華と五虎退は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり、ねっ」
「主様の言う通りでした」
桜華と五虎退のやり取りが何だかわからない加州はポカンとした顔で彼女たちの様子を見ている。
「五虎退がね、加州様も誘ったらどうかって言ったんだけど、たぶん加州様はシャボン玉の楽しさが分からないわって話したの」
悪戯に笑う桜華の表情に加州の顔がより一層微妙な顔になった。
「もう、ふざけてないで、手合わせに行くよ」
一人つまらない加州は五虎退を連れて道場の方へ歩き出す。二人の姿を見送った桜華は、遊んだシャボン玉の片づけをして審神者部屋へと戻った。