第6章 其の六
「主はもっと自信を持ってください。自信を持って俺たちの愛情を受け止めてください。そしてあなたの愛情を分け与えてください」
皆からの口づけは神気を移すためでも何でもない、ただの愛情表現であると長谷部は付け加える。
桜華は自身の唇をなぞりながら「愛情表現……」と何度か呟いた。
その表情は和らぎ、少しだけ安心した様な嬉しそうな顔をしている。
「だから、俺からの愛情も受け取ってくださいね」
立ち上がった長谷部は自分を見上げる桜華の顎を取り更に自分の方へ向かせるとそのまま唇を重ね合わせた。ゆっくりと離した唇はニヤリと孤を描き満足げな笑みを浮かべる長谷部。目をぱちぱちさせて驚く桜華はもう一度「愛情表現?」と呟いた。
長谷部が去ったあと、桜華は愛情表現について考えた。
こんのすけから貰った恋愛小説や少女漫画は審神者になるまで目にした事もない書物で、なかなか興味深いものもあったがお伽話同様に現実にはないものと認識していた。
しかし、これは現実にもあり得る事なのかもしれないと思い始め、もう一度それらを読み始める。
恋愛や男女関係には相当遅れている桜華なのであった。