第6章 其の六
「ずっと一人か……」
「そんなの主様がかわいそうです」
「俺もさ、主に愛して欲しいし可愛がって欲しいって思うから、できるだけ主の事愛してあげたいって思ってる」
笑顔を向けた加州の瞳の奥には何か本気のようなものを感じる。
「たくさん主の事を愛してあげましょう。そして、たくさん色々な事を教えてあげましょう」
「俺らは刀だったが、それなりに色々な事を見聞きしてきた。立派な主もいた。今の主を幸せにすることも大事な使命だよな」
歌仙も和泉守も桜華の事が大好きでもっと仲良くなりたい愛し合いたいと思っているらしい。
顕現されて間もない長谷部ですら、一目見た時から桜華に魅かれるものがあったと言うのだ。これからもっとたくさんの刀剣達が顕現されていくはずであり、ある意味ライバルは増えるのかもしれないが、桜華がたくさんの愛に包まれるのであれば、それに越したことはないと一同同意した。
「つまりさ、スキンシップ?愛情表現?なんていったら主に伝わるんだろう」
「主の考えを変えてもらわないとならねぇよな」
キスや抱擁は桜華への愛情表現だと言う加州に和泉守も加勢する。
「それにさ、主の唇……すっごく柔らかくて気持ちいいんだよね」
彼女の唇の感触を思い出しながら加州がうわ言を言えば、五虎退以外の刀剣らがそれを思い出して鼻の下を伸ばした。
「お前ら、いい加減に……って、皆…そのっ……したことがあるのか」
まさかここにいる全員が桜華と口づけを交わしているとは思っていなかった長谷部は驚いて目を丸くする。
ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべて桜華の唇について語り合う男どもはただの獣にしか見えない……。
大きなため息をついた長谷部は、五虎退に部屋で寝るように伝え。
色惚けをしている4人を広間に置いたまま審神者部屋へ向かった。
「俺が主に話をしてくる。それまでに顔を元に戻しておけ」
呆れ顔の長谷部によって広間の襖はピシャリと閉められた。