第6章 其の六
へし切長谷部が顕現され、大広間に集められた刀剣男士達。
桜華からそれぞれに紹介を受けた後、彼女は一人審神者部屋に戻ってしまった。
大広間にこぢんまりと残された6人は座布団を円形に並べ顔を突き合わせた。
長谷部に関しては彼らと顔を合わせ15分と経っていないが、同じ刀剣同士である、何か感じるものがあるのだろう。
そして口を開いたのはその長谷部であった。
「ところで主は、何か病んでいるのか?」
その言葉に、残りの5人は首をかしげる。
病んでいる……至って元気な審神者である。会ってこの方風邪をひいた所も見たことがないが、どこか悪いのだろうかと頭を悩ませた。
「病ではない。気を病んでいるのかと言っているのだ」
少々いら立った様子で長谷部は言い直す。
「そういや、何か様子が変だっような気もしなくないな」
和泉守も今日の長谷部顕現までの様子を皆に話してみた。
加州にいたっては、夜伽の事はさておきといった様子で昨夜から今朝の桜華の様子を話す。
「昨晩は寝付けなかったみたいだよね。縁側で一人空を眺めていたよ」
歌仙はあの時の桜華の表情や言葉を思い出し、長谷部の話と重ね合わせていた。
「つまりは、大将は俺たちからの口づけは、自分の力量が足りないからそうされてるって思いこんでるって事か」
話をまとめた薬研はため息をつきながら首を振っている。
五虎退には少し難しい話ようで、みんなの顔を見回しているだけだった。
「主は、少し……色々不足してるんだよね」
審神者部屋のある方向へ顔を向けながら加州が呟くと、皆がそれに反応した。
長谷部からどういうことなのかと尋ねられて加州は少しづつ桜華の話をしていく。
彼は一番最初の刀であり、一番長く彼女と過ごしている。
初めて本丸に来た頃の桜華を唯一知っている存在だ。
桜華は人里離れた神域と呼ばれる誰もいない所で一人で暮らしていた事。
文明が進化しているにもかかわらず、情報には疎く、自分達よりも一般的な知識が乏しいところがある事。
本丸に来てしばらくは加州と口をきくこともままならなかった事。
「つまりは、愛情とかそういう事を知らないで生きてきたんだよ」
加州の言葉に皆俯いてしまった。