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【刀剣乱舞】夢の如く華と舞え

第5章 其の五


桜華は考え抜いた挙句に元来た道を引き返す。
まだ彼はいるだろうか?先ほど助けてもらった階段付近でキョロキョロとあたりを見回していると、探していた和泉守の姿を見つけた。

「和泉守様っ」

桜華の呼び声に振り返った和泉守は、必然的に彼女の方へと歩いてくる。自分で呼んだくせに和泉守が近づいてくると足を一歩引いてしまった。
不思議そうな顔をして近づいてきた和泉守は桜華の前まで来ると、彼女に視線を合わせるべく前かがみになる。

「どうした?やっぱり足でも痛めたか?」
「いえ……そうではなくて。もしお時間があるようでしたら顕現に付き合っていただきたくて」

事の次第を矢継ぎ早に告げ和泉守に付き添いを願った。
もちろん二つ返事で了承してくれた和泉守は、桜華の後をついて鍛刀部屋へと向かう。桜華が緊張して見えるのは、自分たちが顕現されて以降、初の顕現であるためにそういう風に見えるのだろうと思っていた。
桜華の心情など知る由もない。

鍛刀部屋から一振りの刀を顕現部屋へと運ぶ。
女性が持つには重たいであろう刀は慎重に和泉守が運んでいった。

「和泉守様はお部屋の外でお待ちいただけますか?」

桜華からの申し入れに和泉守も少しだけ驚いたが、すぐそばにいれば何かあれば分かるだろうとそれを承知する。
桜華は顕現部屋の襖を閉めようと手を掛けると「主」と和泉守が呼び止めた。
その声に顔を上げた桜華の唇に和泉守の唇が重なる。

一瞬にして時が止まった顕現部屋。桜華の呼吸が止まったのも言うまでもない。

「褒美は貰っとかねぇとな」

悪戯に笑う和泉守は硬直している桜華に向かってそう言うと、彼女の代わりに部屋の襖を閉めた。
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