第5章 其の五
桜華がパソコンに向かい業務に取り組んでいるとどこからともなくこんのすけが現れた。
「主殿、今日はとても強いお力が漲っておりますね」
ニヤリと笑う管狐に胸がドキリと跳ね上がる。
当たり前のことだが口づけよりも直接の交わりの方が神気も霊力も上がるという事だ。それを知っているこんのすけは桜華の様子に揶揄いがてらそう伝えたのである。
「お力を強めるのは決して悪いことではございません」
そしてフォローも忘れない管狐は優秀な管理職であった。
「ところで主殿?刀剣男士達のレベルUPもお忘れなく願いますぞ。近いうちに実戦に出向かねばならないかもしれません。男士達の身を守るのも貴方様のお役目です」
「分かっています」
返事をしたものの、どうしたら良いのか分からない桜華はパソコンの画面とにらめっこである。
「画面ばかり見つめていても刀剣達は強くなりませんよ」
手合わせなどで少しずつ力は上がっているものの圧倒的に足りないのも事実だ。
桜華はパソコンの画面をパタンと閉じると階下に降りて行った。
基本的に出陣や遠征に出せる刀剣男士は6人。現在この本丸にいる男子は5人。つまりどう考えても1人足りない。少ない分には出陣は可能であるが力不足は人数で補うしかないのではないだろうかと思われる。
階段を下りながらそんなことを考えていれば、最後の一歩を踏み外しそうになりバランスを崩すのが常というもの……。
最後の一段である、落ちたとてさほど痛くはないだろうがやはり転ぶと思えば身構えてしまう。
力の入った身体が誰かに抱き留められた。
閉じていた目をゆっくりと開いてみれば和泉守の顔が見え、桜華はゴクリと息を呑み込み小さく息を吐く。
「大丈夫か?主」