第3章 其の三
「おや?」
突然声がして、振り返れば寝間着姿の歌仙と目が合う。
「眠れないのかい?」
隣に腰を下ろした歌仙は優しい笑みを浮かべながら桜華の頭をそっと撫でた。
ここの刀剣の皆さまは頭を撫でるのが好きなのだろうか?と思いながらも、人に撫でてもらうのは気持ちが良いと感じている自分がいた。
今までは、誰かにこうしてもらった記憶もなければ誰かにそうしてやった思い出もない。
桜華はふと目に入った歌仙の空いている手に自分の手を重ねた。
すると、頭を撫でていた彼の手がピタリと止まる。
「主?」
少しだけ頬を染めたであろう歌仙であるが、暗がりの中では桜華にその顔は見えていない。
驚いた口調の歌仙の様子に気付いた桜華はパッとその手を退けた。
「すみません……」
俯いてしまった桜華に歌仙は再び笑みを浮かべると、頭に乗せていた手をそっと頬まで滑り落としていき、彼女の顔を自分の方へ向ける。
そして、瞳が重なり合ったのを確認してから唇を吸い寄せた。先ほど重ねられた手を今度は、自ら絡ませて桜華の小さな手を握ってやれば遠慮がちに握り返される。
それが何だか嬉しくて、もう一度角度を変えて唇を重ねた。