第3章 其の三
毎夜、毎夜、夢をみる。
薄暗いあの部屋は、ずっと一人で過ごしてきたあの部屋だ。もう戻ることはないのに、毎夜みてしまうのは何の因果なのだろうか……。
皆が寝静まった深夜、眠れぬ気持ちを抱えたまま桜華は厨へ足を運んだ。水差しの水が底を尽きそうになっていた為、水を汲み再び自室を目指す。
途中の廊下で心地よい風に吹かれた桜華は、夜風が不安な気持ちを薙ぎ払ってくれそうで縁側に腰を下ろした。
小さくなく虫の音と風の音、空には星がキラキラと輝いていてそっと目を閉じれば心地よい眠りに就けそうだ。
自室を1階にしてもらえば縁側で眠れるだろうか?そんな事さえ考えてしまった桜華であるが、自分の我儘で部屋を洋室にしてもらった事を思い出し諦めた。