君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第10章 ☆Bitter+Bitter=Sweet
そのまま彼は波音の上に覆い被さり動かないように体重を掛けるととポケットから紐を取り出す。
「大人しくしてろ、糞アマ。」
その紐を彼女の両手首に巻き付ける。
「っ、動かん。」
「ケケケ、いい眺めだ。これで抵抗は出来ねぇよなぁ。」
ジーンズだったりスラックスだったりといつもズボンで過ごしていた彼女にとってスカートを履いた自分の姿を見られるのが嫌だった。
泥門高校の制服も男子用。誰が用意したのか分からなかったがきっと似合わないと思ったからだろう。
男勝りな性格上、足は広げたり、激しく動いたりするから女子校時代でも先生に「もっと女性らしくしなさい。」と言われた事があった。
「…やっぱり泥門の制服はスラックスにして正解だったな。」
「え…?」
「制服を用意したのは俺だ。」
愉快そうにケケケと笑う彼。
「…やっぱり似合わないからだろ?」
「いや、糞アマのイメージがズボンだっただけだ。中学の時も女子の中でお前だけズボンだったじゃねぇか。」
「それは…そうだけど。」
「理由はそれだけ…って言ったら嘘になるが、てめぇには言わねぇよ。」
それだけではない?
他に何の理由があるのさ?
まぁ、とにかく。と彼は言葉を加える。
「俺はお前のスカート姿を見たのは初めてだ。だから似合う似合わない以前の話だろうが。」
見たことない…?
確かに中学の時はお互い忙しくて遊んだ事ないし。
高校なんて会っても無かった。
彼女の額を中指で弾く。
運悪く良いところに当たったのか、拘束された両手をおでこに持ってきて痛そうに身体を縮こませる。
「てめぇは少し自分対して悲観的すぎる。そんなふうにマイナス思考で大会行かれても困るんだよ。」
「う…仰る通りです…。」
なにかポジティブになるような案は無いものか。ヒル魔は考えた。
そうだ。
今の状況を利用すりゃあいいんだ。