君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第8章 滅私奉公
次の日、波音は言った通り学校に現れる。
一同安堵の表情をしているがやはり悪魔は険しい顔をしていた。
話そうと決めていた帰り道。
ヒル魔の家に向かう為、彼女は彼の一歩後ろに下がってついて行く。
あれからずっと黙ったままだ。
「怒ってる?」
「…」
そんなふうに問い掛けても返事もしてくれない。
そうだよね、あたしがいけないんだもん。嘘を付いていたってすぐ分かるよね。
暗い表情ではあるが彼から離れないようにひたすらついて行く。
「あっ!やっと見付けましたよぉ〜!波音先輩!」
背中から声が聞こえた。
聞きたくない、不安になる声。
彼女は立ち止まるが悪魔はスタスタと歩きを進める。
関係無い人は巻き込みたくない。
振り返ると予想通り南がいた。
「毎日毎日部活の帰りにここを通っても先輩来ないんだもん。心配しましたよ〜。」
相変わらずの作り笑いで何を考えているのか分からない。
ヒル魔と似ているかもしれないが、優しさが全然違う事ははっきりしている。
「で、先輩。あの人誰ですかぁ?あ、もしかして、彼氏ぃ??」
ニヤニヤと揶揄うつもりなのか、波音の頬をツンツンと突く。
「お前には関係無いだろ。」
「あれ、図星?あはは、あんなイケメンと付き合ってんだ〜…ちょっと意外でした。」
私、彼氏とかいないんですよねぇ〜…だから羨ましいなぁ。と頬を膨らませていじけた。…と言うよりかはいじけるフリだったと思われる。
「でもぉ、私が彼を奪っちゃえばいいんだよねっ!」
「え…!?」
「だってこんな出来損ないのカスと私だったら絶対私の方がいいじゃんっ!」
私ってあったまいい〜っと1人で笑う南。
嘘だろ…と呆然と立ち尽くす波音。
「生き地獄ですよぉ!あんたの選手人生絶たせて、あんたの生活も脅かして、あんたの大切な人も奪う。それで最終的には自殺してもらう!これが私にとって最高の幸せなの。」
もう嫌だった。彼女と関係を断ち切れたと思っていたのにまた会ってこんなことになってしまう。本当に死んだ方がマシなんじゃないか。
「ケケケ、そんな目に遭うのはてめぇかもしんねーぞ。」