君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第8章 滅私奉公
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「夕飯までご馳走になりまして、ありがとうございました。とても美味しかったです。」
営業スマイルなのかニコッと幸せそうな顔をしながら彼は湊に挨拶する。
「いいの、いいの!いつも波音の事を気にかけてくれてありがとうね。波音はああいう性格でしょ?だから、友達作るの苦手だし…。あの子からヒル魔くんの話を聞くと悪口しか言ってないんだけど…でも悪口言ってる時もとても嬉しそうで。親の代わりに私が言うけど…これからも波音をよろしく頼むわ。」
湊は何気無く言ったのだろうが、ヒル魔には重く聞こえた。
「…はい。こちらこそ。」
営業スマイルではあったが彼は少しだけ真面目な顔になり静かに頷いた。
「あ、波音に会いに来たんでしょ?話に付き合わせちゃってごめんね。いるから覗く?」
「あ、ではそうさせていただきます。」
湊と一緒に階段を上がり波音の部屋の前に行く。
「波音?起きてる?」
「…起きてるよ。何?」
「ヒル魔くんが来てるけど…?」
「…他に誰もいない?」
「いないわ。」
姉の言葉を聴き、ゆっくりとドアを開ける。
部屋からは大きな兎のぬいぐるみが垣間見える。トレーナーに長ズボンの姿で出てきた彼女に風邪と思われる症状は無さそうだ。
「…姉ちゃん、2人だけにしてくれねぇか?」
分かった。と優しく微笑んで湊は後にする。
「色々謝りたい事あるから…入って。」
彼女は彼を部屋へと招き入れて静かにドアの鍵を閉めた。