君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第5章 Open my heart
彼の家はマンションで意外とシンプルである。
来る前のイメージはなんか真っ黒で怖そうだなって思ってたんだけどそうでもなかった。
黒で統一されて入るんだけど程よく白も使われていてモノクロでシックな感じである。
でも、そんな彼の家は1回しか来たことがない。
なぜなら悪魔は滅多に人を上がらせないからだ。
人嫌いでは無い。でも家に上がらせると勝手な事を始めたりして面倒な事になるから彼は拒む。
そんなあたしが彼の家にまた来れることになるなんて本当に珍しい事であった。
何年ぶりかな。
家の前まで来てチャイムを鳴らす。
ピンポン、と軽そうな音が鳴った。
「空いてるから入れ。」
そんな声が外から聞こえてゆっくりとドアを開けた。
優しいアロマの匂い。
甘く爽やかな匂いからラベンダーだと推測できる。
「甘い物はダメなのに甘い香りは平気なんだ。」
「…この匂いが落ち着くだけだ。」
男の癖にこういうところは女性らしい、というか…なんというか。
あたしとは違うところである。
「で、パソコン持ってきたけど何するの?」
「…夕方までにやれ。」
その一言で渡されたのは大量のアメフト資料。
関東大会に出場するチームと個人の情報が書かれた奴だった。
「うわ…いっぱいあるなぁ。」
腕が鳴る、と呟いて早速両手を使ってWordに打ち込む。
その様子を見て何かに気付く彼。
「てめぇ、もう右腕使えるのか?」