君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第3章 恐れ
「お前、そんな腕で料理とか出来んのかよ。」
悪魔はいつの間にか台所に入り波音の隣に来ていた。
足音もなく静かにここまで近付いて来たことに感嘆の意を評す。
「大丈夫だけど…。あれ?もしかして心配してんの?」
「…してねぇと言ったら嘘にはなるな。」
そう呟くと彼は彼女の腕を容赦無く掴んで上にあげる。
「ぐあああぁぁ!」
痛みが収まる気配は全く無く、むしろ悪化しているように思えた。
ズキン、と大きな針で刺されたかのような痛みに苦痛の表情を浮かべて悪魔の手を振り払う。
「やっぱり大丈夫じゃねぇじゃねぇか!」
「も、もうちょっと優しく扱え!ばかやろー!」
「女子校で何があったか言え。」
真剣な面持ちを見せるヒル魔。
アメフトの事以外でこんな表情滅多に見ない。
余程自分のことが大切なんだと感じて嬉しかった。
冷蔵庫を開けて食材を探し始めながら言った。
「…とりあえず、ご飯作って食べてからにしようぜ?」
彼女は彼の悪魔な性格の中にあるそんな優しさに心を惹かれていたのだった。