君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第3章 恐れ
波音は5個上の姉と一緒に一軒家で暮らしている。
両親は仕事で海外へと赴任していて帰って来るのは年1回あるかないか。
携帯会社で働く姉「湊」はいつも帰りが遅い。
大学を卒業したばかりではあるが優秀なコミュニケーション力で各会社の社長から一目置かれている新米販売員だそうだ。
「ただいま〜、って誰もいないか…。」
「ケケケ、お邪魔してっぞ、糞アマ。」
悪魔がいるとは聞いておらず一旦ドアを閉めた。
「いやいや、ありえないでしょ。」
ドアから背を向けて怪訝な顔で1人で手を横に振る。
その時、バンッと大きな音を立てたかと思えば振り返る隙もなく、後ろ襟を掴まれて地獄への誘いへと案内されてしまった。
「いやいや!どういう事だよ、ヒル魔!」
「ちゃんとてめぇの姉ちゃんには電話した。」
「あたしにも連絡しろよ!…って、お姉ちゃん!」
すかさずポケットから携帯電話を取り出して事情を聞くことにした。
──────
オレンジジュースを飲みながらジッとパソコンをいじる彼を見ていた。
『今日は彼氏とお泊まりしてくるから安心して蛭魔くんとイチャイチャしなさい♡』
何を勘違いすればこんな返事になるのか分からなかった。
いやいや、恋人同士じゃないんですけど。寧ろその関係とは程遠いんですけど。しかもハートマーク付けてくるとかうぜぇ。
頭が痛くなってきたのか、無意識に額に手を当て痛みを抑える。
「で、妖ちゃん、何の用?関東大会の抽選日程は渡したはずだけど。」
無糖のガムを噛みひたすらパソコンで入力している妖怪は笑う。
「おお、そうだった。デビルバッツ全員の得点率、ペンチブレス、40ヤード走、身長、体重、血液型までExcelで纏めておけ。」
「今頃基本データを整理すんの?」
「糞マネだと遅せぇから時間かかんだ。だからなかなか整理する時間がなかったんだよ。」
「苦手なのは…しょうがねぇよなぁ…。」
相手の頼み事は基本受け入れる方針とはいえど書類整理等はすぐ出来る。そう判断した波音は黙って立ち上がり夕飯の支度を始める。