君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第3章 恐れ
「あれ、何やってんだ?」
「げ、厳ちゃん。」
ドキッとして後ろを振り向くとムサシがそこにはいた。
学校内で厳ちゃんというふうに呼んでいるのは多分波音だけだろう。
人が来るとは思っておらず右腕の裾を限界まで捲り、包帯で肘を固定し終えていた彼女の姿があった。
「…その怪我、どうした?」
「なんでも…ないよ?」
「無くはないだろ。ほら、見せてみろ。」
「…私の事よりも厳ちゃんの方が心配。」
素早く右腕の裾を元に戻すと、ムサシの膝を優しく触る。
「…っつ。」
「やっぱり…いつもより膝が7mm腫れてる。こんな状態で試合出るのは危険だからな、アイシングしてやるよ。」
部室ロッカーから救急キッドと氷水を入れた袋を持ってきて丁寧に足の手当てを始めた。
「すまねぇ、サンキューな。」
「大事な時なんだから身体には気を使わないと…壊れちゃうぜ。」
「でも大事な大会が迫ってるからな…休むわけにもいかん。」
「…無理はしないでよ。」
氷水て患部を冷やした後、救急キッドから湿布とネット包帯を取り出して慎重に付ける。
「よし、完了。…じゃ、あたしはこれで。」
おい、とムサシが声を掛ける前に鏡は逃げるように走っていった。